「いかのおすし」を言えるだけで終わらせず、声をかけられたときの断り方、離れ方、助けの求め方を親子で練習する方法を紹介します。
子どもが「いかのおすし」を知っていても、いざ声をかけられた場面で何と言い、どこへ動けばよいかは別の練習が必要です。怖い人役を立てて驚かせるのではなく、通学路や習い事の帰り道など身近な場面を一つ選び、「断る・離れる・知らせる」を一緒に確認しましょう。うまくできるかを試す訓練ではなく、困ったときに大人へつながる選択肢を増やす練習です。
この記事の目次
まずは合言葉を、子どもが取れる行動に置き換える
「いかのおすし」は、知らない人について「いか」ない、知らない人の車に「の」らない、「お」おごえを出す、「す」ぐ逃げる、「し」らせる、という子どもの安全行動をまとめた標語です。ただ唱えられるかを確かめるより、「誰かに予定外の場所へ誘われたら、何をして、どこへ行く?」と場面に合わせて話す方が、実際の行動につながります。
警視庁は、親子で具体的な声かけの例を使い、どうするかを繰り返しシミュレーションする方法を案内しています。断り方や逃げ込む場所は、子どもの年齢や生活範囲に合わせて家庭で決めます。まずは全部を教え込むのではなく、子どもが一人になる場面を一つ選びましょう。
標語は、危険な相手を子どもだけで見分けさせるためのものではありません。相手が知っている人でも、予定にない誘いや移動に迷ったら保護者へ確認してよい、と家庭の約束を補ってください。困ったときにその場を離れられなかったとしても、子どもに責任を負わせず、あとから大人が守ることを伝えます。
合言葉のゴールは、暗唱ではなく「迷ったら離れて、助けを求めてよい」と子どもが知っていること。
練習する場面は、一つだけ選ぶ
登下校、習い事、公園、買い物中など、子どもが一人で行動することのある場面から一つ選びます。「知らない人に声をかけられたら」だけでは広すぎるので、「帰り道に、知らない大人から『車で送るよ』と言われたら」のように、状況を短く設定します。事件の詳細や怖い映像を見せる必要はありません。
親が問いかけ、子どもが考える時間を待ちます。「どうするのが正解?」と採点するより、「最初に何て言う?」「次にどこへ行く?」と分けて聞くと、子どもが答えやすくなります。すぐに答えが出なくても、親が先に短い例を示してから一緒に言ってみれば十分です。
子どもの様子が固くなったり、やりたくないと言ったりしたら中断してください。練習は一回で完成させるものではありません。日を改める、絵に描いて話す、通学路を一緒に歩きながら逃げ込める場所を見るなど、その子が参加しやすい形に変えられます。
「いか」「の」は、短い断り方と距離の取り方を決める
誘いを断る言葉は、子どもが言いやすい短い表現にします。たとえば「行きません」「家の人に聞きます」「大人の人に聞いてください」です。説明や言い訳を長く続ける必要はありません。返事をするのが難しいときは、その場を離れてよいことも一緒に伝えましょう。
車に乗る誘いでは、車に近づかないことを確認します。窓越しに話しかけられた場合も、ドアに近づいて返事を続けず、人のいる方へ移動します。家庭で迎えを頼む人が決まっている場合は、「予定にない人からの迎えは、その場で乗らず、先に家の人へ連絡する」と具体的に決めておくと迷いを減らせます。
親が相手役をする場合も、腕をつかむ、追いかける、突然大声で驚かせるといった演技は不要です。落ち着いた声で一度誘いの例を読み、子どもが断る言葉を言ったら、次に進む方向を一緒に確認します。
「お」「す」は、助けを呼んで人のいる場所へ動く
「大声を出す」は、決まった大きさの声が出せるかを競うものではありません。声を出せる子には「助けてください」「この人について行きたくないです」など、周りの大人に状況が伝わる言葉を練習します。声が出にくい子には、防犯ブザーを鳴らす、近くの大人のそばへ行く、店に入って助けを頼む方法も確認してください。
警視庁は、通学路や自宅から習い事先までを親子で歩き、店舗など駆け込める場所を実際に確かめるよう案内しています。「子ども110番の家」の表示があっても、営業中か、入口が分かるか、子どもがたどり着けるかを見ておきます。利用できない時間帯に備え、交番や営業中の店舗など別の候補も考えておきましょう。
練習は、声を出す・ブザーを使うところで終わらせず、その後にどこへ移動するかまで確認します。危険を感じて相手から離れ、安全な場所に着いたら、近くの大人に事情を伝え、保護者へ知らせます。いま危険が続いている場合は、子どもだけで解決させず、近くの大人に警察への通報を頼みます。
声が出ないときの代わりも決める。ブザーを鳴らす、店や交番へ行く、近くの大人に助けを求める。
「し」は、その日のうちに話してよい約束にする
声をかけられたり、つきまとわれたりした後、子どもが「たいしたことではない」と考えたり、怒られると思って黙ったりすることがあります。「何があっても話していい」「約束どおりに動けなかったとしても、まず話してくれたことを大切にする」と先に伝えましょう。
保護者は、帰宅後に「今日、困ったことや嫌だったことはあった?」と落ち着いて聞きます。話が出たら、細かく問い詰める前に安全を確認し、子どもの言葉を遮らずに聞きます。場所や時間など必要なことをメモし、学校や警察へ相談するかを検討してください。警視庁は、声かけやつきまといを軽く扱わず、警察と学校への連絡を呼びかけています。
子どもがその場で「知らせる」ことまでできなかった場合も、後で話せれば次の対応につなげられます。大人側は「なぜ言わなかったの」と責めるのではなく、相談しやすい雰囲気だったか、帰宅後に話す時間があったかを振り返りましょう。
短い練習を繰り返し、生活が変わったら見直す
北海道警察は、「いかのおすし」を子どもが楽しみながら学べるよう、歌や踊りの教材を公開しています。歌や絵を使うと覚えやすい子もいますが、覚えたことだけで実際の対応ができるとは限りません。最後に、家庭で決めた場面を一つ話し合い、断る・離れる・知らせる動きにつなげましょう。
練習した後は、正解数をつけるのではなく、「言いにくかったところはあった?」「どこへ行くか分かった?」と聞きます。答えにくそうなら、親が選択肢を二つ示して一緒に決めます。通学路、習い事、迎えの人、子どもの持ち物が変わったときは、逃げ込む場所や連絡方法も見直してください。
防犯の約束は、危険を完全になくすものではありません。地域の見守りや学校の指導、家庭での環境づくりと合わせ、子どもが助けを求めたときに大人が受け止めることが大切です。今週は、帰り道で頼れる場所を一つ一緒に確認するところから始めてみましょう。
家庭で確認する手順
- 01子どもが一人になる場面から、練習する状況を一つ選ぶ
- 02短い断り方と、相手から離れる方向を一緒に決める
- 03声を出す・ブザーを使う・近くの大人に頼る方法を試す
- 04通学路や習い事先で、実際に助けを求められる場所を確認する
- 05困ったら後からでも話してよいと伝え、生活が変わったら約束を見直す
よくある質問
- 「いかのおすし」は何歳ごろから教えられますか?
- 決まった年齢だけで区切るより、子どもが理解しやすい言葉や場面に合わせて始めます。幼い子には「行かない」「大人に知らせる」など一つずつ伝え、行動範囲が広がったら具体的な場所や連絡方法を加えましょう。
- 知らない人について行かない、と教えれば十分ですか?
- それだけでは迷う場面が残ります。予定にない誘いや移動に迷ったらその場で乗らず、保護者へ確認すること、困ったら離れて助けを求めることも家庭の約束にします。子どもだけで相手の危険性を判断させないでください。
- 子どもが大声を出せない場合はどうすればよいですか?
- 大声だけを唯一の方法にしないでください。防犯ブザーを使う、近くの店や交番へ行く、大人のそばで助けを求めるなど、子どもが実行しやすい方法を複数決めておきます。
- 親が不審者役をして練習した方がよいですか?
- 子どもを驚かせたり、追いかけたりする必要はありません。親が落ち着いて声かけの例を読み、断る言葉と移動先を一緒に確認するだけでも練習になります。子どもが嫌がったら中断してください。
- 子どもが声をかけられたことを後から話したら、どうしますか?
- まず、今の安全と子どもの気持ちを確認し、話してくれたことを受け止めます。必要な情報を落ち着いて聞いたうえで、学校や警察への連絡を検討しましょう。子どもを責めず、再発防止に必要な対応を大人が引き受けます。
- 歌や動画を見せるだけでも効果がありますか?
- 歌や動画は言葉に親しむきっかけになりますが、実際にどこへ行くか、誰に助けを求めるかは家庭や通学路に合わせて確認する必要があります。見た後に短い会話や場所の確認を加えてください。