視察・参加報告の詳細
亀岡市の府道王子並河線 安全対策社会実験 視察報告
2013年6月17日~7月8日にかけて、亀岡市交通安全対策協議会による交通安全対策社会実験※1が実施されました。
成果統合型実装プログラム「国際基準の安全安心な学校・地域づくりに向けた協働活動支援」プロジェクトにおける先進地事例として、この社会実験の視察を行いました。
社会実験対象区間(亀岡市ホームページより)
(1)きっかけは篠町自治会からの要望
2012年4月、京都府亀岡市で集団登校中の児童の列に車が突っ込む事故があり、速度抑制の対策として、「ハンプを設置してほしい」「歩道のカラー舗装をしてほしい」との要望が地元自治会より上がりました。要望を受け、亀岡市交通安全対策協議会(下記に詳細)は府道王子並河線安全対策社会実験研究会※2を立ち上げました。この研究会では実施の方法やそれに伴うアンケート調査等について協議を重ね、社会実験を行うことを決定しました。
(2)つながりの強い自治会の組織と施策横断の関係者組織
社会実験を実施した亀岡市は、昔ながらの組織の枠組みによるつながりが強い地域です。自治会は、旧1町15村と住宅開発地などの新規コミュニティを加え、現在23自治会が運営されていますが、このほとんどが昔の町村の枠組みで組織されています。このことからも昔ながらのつながりが強く、自治会の組織率は90%以上とかなり高くなっています。自治会は複数の区(本社会実験の対象地域である篠町の場合は36区程度)により構成されており、この「区」が昔の隣組のような機能を果たしています。
このような自治の組織形態があることにより、社会実験の大きなハードルの一つである住民の合意形成が図りやすい環境でした。
また、亀岡市には、事故前から自治会、市、府、国、専門家による亀岡市交通安全対策協議会が組織されていました。この組織は、縦割りではなく、施策横断の関係者組織として交通安全対策を行っていました。今回、この協議会が母体となることで、住民・市・府・国が一体となり取り組みを行うことができる環境を整えることができました。
これらの2つの組織が作り出す環境により、事故後1年という短い時間で社会実験が実現に至りました。
ハンプ設置個所
(3)役割分担による実施
社会実験は、それぞれの関係者が役割を分担して進められました。例えば、自治会は住民(8000世帯)の合意形成を図る役割を担いました。市は、関係機関と調整や道路整備を行うこと担い、府はアンケート調査による、実験の効果検証などを担いました。
(4)根拠に基づいた安全対策の実現
今後、実験の結果を受けて、安全対策を実施することとなります。実験を行ったことにより、根拠に基づく安全対策が行われることとなります。また、横断的な組織による効果的な推進も図られることとなり、これらの仕組みや取組みにより高い対策の効果が期待されます。
(5)セーフコミュニティの取り組みの広がり
施策横断の組織作りや根拠に基づく取り組みの推進は、亀岡市が認証を受けているセーフコミュニティの取り組みともリンクします。これまで、比較的ソフト的な取り組みによるものが多かったセーフコミュニティの取り組みが、ハード整備にも繋がる事例としても注目度が高く、今後の広がりが期待できそうです。
(取材:橘たか・佐藤安澄)
狭窄設置箇所
※1 社会実験の概要
http://www.city.kameoka.kyoto.jp/ansin/documents/shakaijikkenjissinogoannnai.pdf
【目的】
交通安全対策を進めるため、速度抑制施設を実験的に設置。通行する車両の速度抑制状況、交通量の増減度合、事故防止効果や周辺への影響を検証する。
【対象区間】
府道王子並河線の国道9号線王子交差点から市道馬堀駅国道線の交差点(篠町馬堀)までの区間。
【速度抑制施設】
(1)狭さく施設
道路の一部を狭くして通行車両の速度を抑制
(2)高視認性区画線
区画線上を車両が走行すると音が鳴り、ドライバーに注意を促す
(3)ハンプ施設
車道の一部を盛り上げて、通行車両の速度を抑制
※2 府道王子並河線安全対策社会実験研究会
- 地元自治会(篠町自治会、王子区、篠区、馬堀区、柏原区)
- 国土交通省(京都国道事務所)
- 京都府警察(交通企画課、交通規制課、亀岡警察署)
- 亀岡市(土木管理課)
- 亀岡市教育委員会(学校教育課)
- 事務局:亀岡市(安全安心まちづくり課)
- 実験担当:京都府(道路管理課、南丹土木事務所道路計画室、企画調整室)
- 調査委託先:(株)オリエンタルコンサルタンツ 関西支店 交通グループ