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シンポジウム『地域「子ども安全」活動の評価と改善』開催報告

地域活動の評価は非常に困難なこととされています。そして日本では、イギリス・アメリカなどの欧米諸国に比べ評価研究の立ち後れが特に目立ちます。そこで,他国の評価研究の知見を取り入れて日本の地域活動にフィードバックしていきたいと考え、本シンポジウムを開催しました。

※シンポジウムの開催概要はこちら

まず、子ども安全まちづくりパートナーズ兼JST山本PJのメンバーである、山本俊哉氏、守山正氏、瀬渡章子氏から、日本の子ども安全に関する考え方や取り組み、評価について報告がありました。

その後、ロンドン大学 ジル・ダンドー犯罪科学研究所のリチャード・ウォートレイ氏に、子どもの安全を守る地域活動の評価研究についてお話をいただきました。

シンポジウム全体の報告書は後日発行されますので、ここでは、ウォートレイ氏のご講演について報告します。

 

子どもの安全に関するプログラムの種類

どのようなプログラムであれ、評価をすることは不可欠です。評価をしなければ期待する結果を導きだすことは難しいのです。子どもの安全に関するプログラムには以下の3つがあります。

 

  • 教育プログラム

「子どもが危険からどのようにして身を守るか?」を教え、その効果を検証します。しかし、子どもに技能を教えることは簡単ですが、実際に子どもがそれを使えるかという証拠を出すことは非常に難しいことです。そもそも、「子どもが自身の身を守るとこについて責任を負うべきなのか。大人が守るべきではないか」という議論もあります。

 

  • コミュニティによる要望に対するプログラム

これはコミュニティの結束を強くすることです。特に貧困のコミュニティとそのコミュニティ内の施設において非常に重要とされています。しかし、これに対する評価研究は非常に乏しく、したがって子どもの安全に対する評価研究もほとんどありません。

 

  • 状況予防(環境予防)プログラム

これは、特定の犯罪に対して有効な対応をとるプログラムです。

 

評価の方法:プロセス評価と成果の評価

評価には2つの種類があります。1つは「プロセス評価」です。あるプログラムの実施面を評価することです。例えば、登下校の見守りというプログラムがあった場合、その見守りの実施がうまく行っているかどうかを評価します。

もう1つは「成果の評価」です。これは、望んだ成果を実現できたかどうかを評価します。つまり、プロセスの評価を行わなければ成果の評価も行えません。

 

地域の防犯活動は犯罪を転移させるのか?

地域の防犯活動を行うことによって「犯罪を転移させているだけではないか?その地域が良くなってもまわりの地域に犯罪者が移って行くだけではないのか?」という批判を受けることがあります。

これまでの研究の結果分かっていることは、想像するほど犯罪の転移は生じていません。これまでの研究をみると、地域防犯活動による犯罪の転移が立証されているのが約20%、近隣の地域の環境も改善されている(効果の拡散がみられる)と立証されているのが約27%みられます。ここで申し上げたいのは、みなさんが行おうとする地域防犯活動プログラムの評価項目に「犯罪の転移が起こっているか」を加えて欲しいことです。つまり、これを加えることによって、地域防犯活動が犯罪を転移させたわけではないことを示すことができるからです。

 

よい評価の特性のまとめ

  • 理論があること。介入がうまく行っていると思わせる根拠を示すこと。
  • 具体的な仮説や予測をテストすること。介入前テストを行うこと。
  • 可能であれば対照群を設けて評価すること。
  • 可能であれば犯罪の転移について調査を行うこと。
  • 実務家なら、評価の結果を実際の実務に反映させること。

 

会場からの質問とウォートレイ氏の回答

Q.子どもに関する犯罪は非常に数が限られています。1つの地域で十数年に一度起きるかどうかという具合です。このような稀なケースでも評価はできるのでしょうか?

A.それはできません。このような稀なケースにおいては、古典的な評価方法では限界があります。ですから、地域コミュニティの反応を見るとか、犯罪に対する不安感がどれくらい生じているかを測定するという評価ぐらいしかできないと思います。それを踏まえて研究のデザインはデータに即したものでなければならないし、目的に則ったものでなくてはなりませんから、「柔軟性」が非常に大切であると言えます。

 

Q.対照群を設けることについて、適当な対照群を選定するのが困難であると感じますが、どのように選定すればよいでしょうか。

A.確かに、適切な対照群を見つけることは難しいものです。できるだけ社会人口学的な測定を行い、可能な限り多くのデータを獲得することしかできないと思います。

 

Q.とても狭い介入範囲であった場合に、対照群は任意に選んだ同程度に狭い大きさであるべきなのか、それとも介入地域を含む全体、例えば都道府県であるべきなのか、どちらでしょうか。

A.対照群を使った調査と定位を調べる調査というのは、必ずしも同じではありません。定位の場合は道路、線路、交通など、犯罪者の移動があるかどうかという点が重要となるため、定性的に選ばれることになるでしょう。この場合、場所の広さや大きさはあまり問題になりません。なぜならレートで見ているからです。

 

Q.犯罪がおきにくい環境を作るという意味とは違いますが、犯罪者側からアプローチをするという観点については、どうお考えでしょうか。

A.犯罪者の更正と、出所後の監視によって話は異なります。更正は非常に難しいものです。よい更正を行うことで再犯率が15%下がるという結果がありますが、劇的に大きな効果があるとは言えません。犯罪を制していくには1つの方法ではできません。私は環境犯罪学を行っていますが、これは他の分野にも大きく貢献できることがあるはずだと考えています。

 

Q.犯罪の状況や促進的因子について環境犯罪学の中で研究されていると思いますが、犯罪からの子どもの安全を守るために活用できるアイディアがありましたら教えてください。

A.決して容易ではありません。私の調査の結果では、子どもに対する性的犯罪の約70%が家庭で起きていますから、それに対して何らかの戦略を立てようとしても非常に難しいのです。ただし、子どもを守るためにできる合理的なこともあります。子どもに自分の身を守ることを任せきりではいけません。保護者としては「子どもと誰が一緒にいるのか」「どこにいるのか」を常に把握することが、子どもを犯罪者から守るためにできる最大のことだと思います。

ウィンの希望のものがたり

関連サイトのご紹介

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