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シンポジウム「東日本大震災被災地の子ども達の今とこれから」開催報告

 被災地の復興には、子どもたちが安全で安心して暮らせるまちづくりの視点を取り入れてほしい。そのために、私たち子ども安全まちづくりパートナーズは何ができるのか?について検討したい。そのような思いから、今回のシンポジウムを企画しました。その内容を簡単に報告します。

 

根本暁生氏 講演者は、仙台市でNPO法人冒険遊び場せんだい・みやぎネットワークの根本暁生さんです。根本さんは3月11日に、ご自身がプレーリーダーとして勤務する海岸公園冒険広場で被災し、その体験談を語っていただきました。ここで、その一部をご紹介します。

 

冒険遊び場の紹介

冒険遊び場

「海岸公園冒険広場の中には冒険遊び場がありまして、そこの指定管理を行っています。冒険遊び場を始め、デイキャンプ場や冒険遊び場とは対極にあると思われる大型の既成遊具もあるような公園です。冒険遊び場自体を知らない方もいらっしゃるかもしれませんが、『自分の責任で自由に遊ぶ』遊び場です。そんな冒険遊び場のある公園ということで、公園の運営自体にも『自分の責任で自由に遊ぶ』という主旨をできるだけ活かして、過剰な管理ではない運営を日々行っております。管理の視点で「これはしないで」というよりも、どうやったら子どもたちがやりたいことをできるかを考えて、できるだけやりたいことが達成できるようにという視点で運営をしています。」

 

地震発生時の状況

「海岸に近い公園ですから、普段の防災対策について“まずは津波”と僕らは考えていました。年に2回、地域や行政の各機関が集まる運営委員会でも毎回話題にあがるものだったのですが、ここまでというのは正直想像していませんでした。地震発生は14時46分でした。その時、園内には20名ほどの来園者がおりました。平日の午後で天気はそれほど悪くなかったのですが、寒い時期であったので少なめでした。20名のうち半分ぐらいは障害児の通所施設の団体で、親子が3グループ。そして地元の町内会長さんが公園のすぐ近くの横の所を散歩していました。これらの方々は15時10分には全員避難が完了しました。その後、近隣の地区から避難してきたおばあちゃん、甥御さん、お孫さん、犬1匹、猫1匹が公園に避難をしてきました。そこで、スタッフが僕を含めて2人が残りました。津波が来たのが15時50分頃です。防風林の松がバキバキバキと折れる音が聞こえました。冒険広場のあたりが島のように残り、あたりはすべて水浸しになりました。その約1時間20分後、自衛隊のヘリコプターにより全員が救出されました。

避難先での体験

僕たち家族(妻、子供6ヶ月)が避難していたのは南材コミュニティセンターという施設です。臨時の避難所のため60人ぐらいと規模は小さく、避難している同士顔がつながる関係ができ、非常に良かったと思っています。避難者の中で、それぞれがコミュニケーションをとろうとする状態に自然になっていきました。僕たちの他にも小さい子をつれた親子が何人かいて、かなり泣いたりしてうるさいこともありました。そこで、名前がわかる関係があるとみんな見守ってくれるということで、まずガムテープに名前を書いて胸にはったりだとか、似顔絵を描いて自己紹介ポスターを作ったりだとか、そのようなことをしながらできるだけお互いの名前を覚え合うことをしました。そのようにして、お互いに見守ってもらえる関係がつくれたと思い、それは本当に良かったと思います。
 僕は1週間避難していたのですが、おばさんや学生さんなどが子どもたちの面倒を見てくれました。子どもたちにとっては狭いところなので、発散しにくいところがあって、色々関わりながらできるだけ子どもたちがストレスをためないようにできたらいいと思って、僕たちもやっていました。
 ここに避難していたおばあちゃんで、子どもたちが遊ぶので「迷惑かけるな」、「こんなにうるさくするなら、私出て行くから!」と言って、かなりピリピリして叫んでいるような時もあったのですが、僕もそうだし、他の人たちも声かけしてくれて、ずっと避難所が閉鎖されるまで子どもたちといることができました。そのおばあちゃんが、それだけ「迷惑かけるな」と言ったというのは、ここに来る前の段階でやっぱり見守ってもらえる状況がなかったからだと思うし、実際、体育館のようなすし詰めのようなところではそう言わざるを得ない状況があったんだろうなということは、容易に推しはかることはできます。そして、本当にたくさんの避難者の方がいて学校が再開できないという全市的な被害状況の中で、子どもたちの安心できる場所はすごく少なかったのではないかと思います。

震災後の子どもたちの様子

「六郷小学校の校長先生の話です。『子どもたちが遊んでいる時の表情を見ると、元気に遊んでいるように見えても、前に見られたようなギラギラした感じが見られなくなっている。』キラキラじゃなくてギラギラと先生は言いました。『僕は来年退職するのだけれど、退職するまでの1年、子どもたちのギラギラした表情を取り戻すのが目標だと思っているんだ』と熱く語ってくれました。僕たちが校庭への遊び場の開設の相談に行ったときにも快く応じてくれて、こんなところからも取り組んでいます。」
「荒浜小学校では、避難しているところがみんなチリジリなので、スクールバスを出して、学校へ登下校しているという状況だそうです。そうすると、学校が終わると前はみんな校庭で遊んでから帰ったのだけれど、今はスクールバスの時間になると帰らなければならないので、子どもたちにストレスがすごく溜っている。ちょっとしたことで、それこそ、「にらんだ」「にらまない」という話でけんかをしているということが増えていると先生が報告してくれました。」

遊び場の提供と心のケア

「遊び場に取り組んでいる僕たちにできる子どもたちへの心のケアについて、まず一番大事にしているのは、子どもは遊ぶ中で自ら癒す力を持っているということだと思っています。報道等でよく紹介されているのは、スクールカウンセラーとか、プレイセラピーで遊びを通して治癒させていくという、大人の直接的な話が多いと思うのですが、それはそれで必要だけれど、平行して遊べる環境自体を作ることが大事だと思います。」
「仙台では、だいたい4つのプレーパークの活動団体がありますが、その一つが3月27日にプレーパークの開催が予定されていました。もともと月に1回活動していたところです。そこで、体育館には避難者がいたので開催するかどうかを話し合いました。そして、とにかく顔を合わせられる場をつくろうと『いつものようには遊べないけれど、スタッフがいつも場所にいます』ということをチラシに書いて、いち早く活動を開始しました。さらに、4月7日にも臨時で開設しました。」
「もう一つのプレーパーク周辺は、それほど被害の大きいところではありませんでした。しかし、運営しているお母さんの間で話し合うと、子どもが不安を抱えていて最近べったりしてという状況でした。そして、やっぱりこういう遊び場が必要だよねとなり、3月末にはまず自分たちだけでも集まってみようと取り組み始めました。4月になると5日間連続開催なども始めました。本当に津波被害は大きく取り上げられるけれども、ここの話を聞いていると、やっぱり震災の影響というのは大きな直接的な被害を受けていないところでも、大きいものだと改めて感じさせられたと思っております。」
「気仙沼にあるプレーバークを手伝いに行ったスタッフから聞いた話です。そこでは、地元の方が土地を提供して、常設の遊具をつくっています。ここで、子ども達が「津波がきます!」といって、みんあうわ〜と言って「避難する!」「飲み込まれた」など言いながら滑り台を駆け上がるようにして遊んでいたそうです。そして、いつものように遊んでいる隙間で「俺、家がなくなったんだよね」なんてつぶやいたりとか。表現の仕方は子どもたちによってそれぞれですが、遊び場がちょっとした表現する場になっていました。また、地域の大人たちも集まってきて、いろいろ話をしています。『子どもの遊ぶ姿を見ると私たちが癒されるのよね』『会社で嫌なことがあった時は、私はここへこようかしら』なんて言っていたとも聞きました。」

遊びの専門家として思うこと

 「避難から復興へ、この移行のタイミングこそ、遊び場活動が必要だと思っています。中長期的に見たときの子どもの心のケアを考えると、初期のようにいろいろなところが緊急支援で入ってきて、丁寧にケアして帰っていくということができなくなってくるので、
日々の生活の中でどうやって子どもたちを見守る環境を作ることができるかということが大切になってくるのではないかと思っています。
 また、先ほどの気仙沼のように、僕たちがいた六郷もそうですが、子どもの遊び場に遊びがあると同時に、大人たちが子どもを理由にして集まってきて、それこそ大人が集まるという場ができる。
大人は「話し合い」と言って集まると、今後どうやって地域を再建していくのか?という話題になって、それは深刻なことで非常に緊張すると思いますが、遊び場に子どもを理由にして集まると、あまりいろいろと考えずに集まれるという、さっきの人の言うように大人の癒しの場にもなるのではと思っています。
 今後は専門家等による外部支援だけでなく、身近なところで身近な人が一人一人つくる環境が大事になってきます。その中で子どもたちがのびのびと暮らせる、そんな環境をどうやってつくるかということが必要になると思います。僕たちはプレーリーダーです。自分たちで直接的にできることには限界がありますが、いかに子どもたちのための場づくり、環境づくりにつなげられるかという視点で活動できたらと思います。」

ウィンの希望のものがたり

関連サイトのご紹介

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  • 市川市稲荷木小学校周辺地区 子ども安全ホームページ
  • 親子で一緒に考える 子ども安全ホームページ
  • 犯罪からの子どもの安全
  • ristex 社会技術研究開発センター