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ミニシンポジウム「子どもの移動自由性と安全なまちづくりに向けての子どもの参画」

「子どもの移動自由性」とは、子どもが大人による監視などなしに自由に移動することを指します。子どもの成長や生活の質の向上にとって非常に大切であるとされています。「子ども安全まちづくりパートナーズ」では、1月13日、この移動自由性をテーマにしたミニシンポジウムを開催しました。




シンポジウムではまず、ウーロンゴン大学のカレン・マロンさんの講演およびメルボルン大学のキャロライン・ホイッツマンさん(代講・木下勇さん)の講演により、子どもの移動自由性に関する世界各国での調査が紹介されます。その後、東京大学の雨宮護さん、千葉大学のリーラ・プロビ・ドリアンダさん、建築研究所の樋野公宏さんが日本国内での研究を発表し、最後にフロアをまじえて討論します。【プログラムはこちら】


カレンさんの講演では最初に、子どもの移動自由性をはかる指標が紹介されました。親が「子どもが一人で大通りを渡る」「学校以外の場所に一人で行く」「一人で通学する」暗くなってから外出する」「交通機関を使う」「大通りで自転車に乗る」を許可していれば移動自由性が高いと見なす、というものです。

カレンさんはこの指標を使って世界各国で子どもの移動自由性の調査をおこないました。2010年までおこなった最新の調査です。その結果、1971年と2010年を比較したとき、さまざまな国で大幅に移動自由性が減少したことがわかりました。国による差は大きく、日本とフィンランドが子どもの移動自由性の高い国であることがわかりました。


国による差の要因としては、社会的な信頼関係の強さ、環境のアフォーダンス(家から遊び場まで容易にアクセスできるか)などが考えられるとのことでした。

「社会的な信頼関係の強さの違い」とはなんでしょうか。カレンさんがはじめて日本を訪れたとき、子どもたちが子どもたちだけで通学している光景を見てたいへん驚いたといいます。周囲の大人は「子どもは交通事故に遭わないように気をつけているし、通行人も見ているからだいじょうぶ」と考えます。

つまり、日本では子どもは危険を回避する能力があると見なされ、社会のさまざまな人が子どもをケアすると考えられているのです。それに対して、イギリスやオーストラリアでは、子どもは身を守る能力がない、保護されるべき存在と見なされ、子どもをケアするのは親などごく近い関係の大人だと考えられています。




続いて、雨宮さんの講演では、世界的に見れば子どもの移動自由性のある日本でも、親による子どもの行動規制が進んでいることが説明され、それを確認するためのつくば市での調査が紹介されました。親と子どもの双方に対する質問紙調査です。

その結果、子どもの遊びを親がコントロールすることで、子どもの遊びの多様性が損なわれることがわかりました。また、近隣の危険性が少ないとわかったり、近所づきあいがさかんになると、親から子どもへの規制は緩和される傾向もあきらかになりました。親と地域の関係は子どもの遊びにとっても重要、という結果です。


リーラさんの講演では、東京とその近郊、それに地方都市二カ所を対象にした比較調査が報告されました。

その結果、地方では日本では少ないとされていた子どもの車通学が始まっていることがわかりました。また、東京の子どもがもっとも移動自由性が高いこともわかりました。親は周囲の大人に信頼感を持ってはいるものの、不審者への警戒感も強いため、子どもの行動の規制は強くなる傾向にありました。

樋野さんの講演では、松山市で実施した子どもの健康とコミュニティに関する調査から、子どもの移動自由性に関する項目の調査結果が紹介されました。

多くの子どもは親の知らないところでゲームセンターなどで遊んでいました。自然の中で遊ぶ子どもは地域への評価が高い傾向にありました。ほとんどの子が塾や習いごと、部活をしており、忙しい子より何もしていない子のほうが不眠や体力への不安を抱える傾向にありました。



討論では、樋野講演の結果から、

「移動自由性と子どもにとってよい要素にアクセスしやすい環境(カレンさんの言う「環境アフォーダンス」)だけでは、子どもは自然の中で遊ばないのでは?」

という疑問が提起されました。

それに対して、プログラムされた活動では自分で遊びを考える能力が育たないという懸念があること、ゲームを仲間づくりに生かしている事例などが紹介され、「ゲームだからといって一概に否定することもできない」「機器を生かす方向づけをしてあげることも大切」といった意見が出ました。

そのほか、携帯電話と子どもに関する議論などがあり、最後にカレンさんから、

「私は親たちに、『子どもの今の経験は、生きていくためのスキルを得るためのものでもあるのです。大人になってスムーズに生きていけるスキルを身につける経験を得られるようにしてあげてください』と伝えたいのです」

とのメッセージが伝えられ、シンポジウムは閉幕しました。


(文責・松本早野香(明治大学理工学部都市計画研究室研究員)

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