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東京都主催の子供見守りシンポジウム「通学路における子供の安全確保のためにできること」基調講演の講演概要

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8月22日に開催された、東京都主催の子供見守りシンポジウム「通学路における子供の安全確保のためにできること」において、当法人代表、山本俊哉によって行なわれた、基調講演の講演概要を、掲載します。

日時 平成25年8月22日(木曜日)13時45分から16時30分まで(受付開始:13時15分)
会場 東京芸術劇場 7階コンサートホール(豊島区西池袋1-8-1)
プログラム

基調講演(20分)「地域で守る『子供の安全』」
明治大学理工学部建築学科教授 山本 俊哉

他 講演・パネルディスカッション

>>シンポジウムの詳細はこちら

主催 青少年・治安対策本部、教育庁、警視庁
参加者数 1,800名

※「国際基準の安全な学校・地域づくり」webサイトにおいて、基調講演で使用したスライドを公開しています。「担い手の育成(研修プログラム)」をご覧ください。

地域で見守る子供の安全

山本俊哉(明治大学)

よく「子供は社会の宝、地域の宝」と言われます。少子化が進みますと、一層貴重な存在になってきます。一方で、子供は社会的にも生物的にも弱い立場にいることから、保護の対象になるということは言うまでもありません。特に幼い子供は危機予知能力や危機回避能力が低く、今の子供たちはこうした能力を高める機会が少なくなってきています。

 それから、子供にとっての都市の空間が、私どもが子供だった頃と比べ随分変わってきています。こういう中で、痛ましい事件や事故が起きているわけです。今日、お集まりいただいた皆様方は、それぞれの立場でそれぞれの取組をされていると思います。

 事件が起きますと、いろいろな対策が取られますが、極端な取組は無理が生じます。無理が生じると、長続きせず、取組にムラが生まれます。そうした隙間に、痛ましい事件が発生します。過度な対策をとると、子供の健全な育成を阻害することもあります。

 全国各地で「安全マップ」づくりが行われています。皆様のところでも何らかの形で作られていると思います。元々は大人が点検をして対策を講じるために作られたものですが、ここ10年ほど前からは子供自身の危機回避能力を高めるためということで取り組んでまいりました。しかし、これも行き過ぎると、あら探しのように危険な場所を探す「危険マップ」づくりに陥る可能性があります。

 

 子供の防犯対策について、これからお話をしていきますが、特徴は3つあります。一つは子供のために大人が考えて実施するということ。二つ目には、犯罪への不安が起点になりますが、どちらかというと自分自身が被害に遭う不安よりも自分の子供や親しい人たちの弱者が被害に遭うのではないかという不安から対策が講じられる傾向があるということ。三つ目は、発生頻度が高くてもダメージが小さい軽微な犯罪はどちらかというと過小に評価され、たまにしか発生しないけれども重大な事件につながる犯罪は過大に評価されるということです。したがいまして、リスクを正しく評価する、あるいは判断することは非常に難しい状況にあります。

 

「安全」と「安心」はよく並列して使われますが、決して同じではありません。この3月まで私の大学の同僚に北野大先生がいて安全学を教えていました。そして「安全と安心はどう違うのか。」という質問をされました。また続けざまに「俺の弟だったら、何と答えると思う。」と聞かれました。北野武さんならば、どう答えると思いますか。皆さんはどうですか。

 北野武さんならば、「字が違う。」と答えます。これは的を射ています。安心は文字通り「心」の問題です。つまり、主観的な判断に依存します。同時に安心感は信頼感と関係します。つまり、不信感が不安感につながってくる訳です。

一方で、安全性は、客観的な測定が可能です。私は理工学部に所属しておりますが、物理的に何かを測るには距離と時間と重さで測ります。被害のリスクも客観的に測定することは可能です。これは災害や事故についても、また他の分野についても同じことが言えます。それらに共通することは、「リスクは発生する頻度と、発生した時に受けるダメージを掛け合わせたもので推し量ることができる。」ということです。

 「安全には絶対的なものはない。被害をゼロにすることは難しい。」と言われていますが、これは災害も事故も同じです。しかし、減らすことはできます。いかに発生頻度を減らしていくか。仮に発生したとしても、いかにダメージを小さくするかということです。

 労働災害の分野では、ハインリッヒの法則というものがあります。これは一つの重大な事故の背景には、29件の軽微な事故、300件の軽微な事案(ヒヤリハットなるもの)があるということを統計のデータから示しています。

 子供の事故についても、1件の事故死の背景にどれくらいのものがあるのかという推計があります。同じようなことが犯罪についても言えるのではないでしょうか。つまり軽微な事案を少なくしていくというところから取り組むことによって、重大な事件につながらないようにするというアプローチが考えられます。

 「犯罪や非行がどういうとき、場所で発生するのか」という理論(ルーティン・アクティビティ理論、日本語では「日常活動理論」)では、犯罪や非行は「犯罪をしようと思っている者」が「その標的となる人あるいは物」、さらに「有能な監視者の不在」が重なったときに発生するとされています。

 こう考えますと、犯罪者が標的となる子供に近づく量があり、見守る者がこの量を減らしていくことにより発生頻度を少なくしていくということが考えられます。もっとも四六時中すべての時間や場所で見守るということは、絶対に不可能です。

 一方、犯罪者は見られているかもしれないというリスクを考えながら犯行におよびます。したがって、いろいろな機会を捉えて、見守りやすい空間や状況を作っていくということがとても大事です。これには切り札がありません。

 理屈っぽい話はこれまでにして、具体的な例でお話しましょう。私の専門は建築・都市計画です。だから、まず次のようなことを考えます。

工場の跡地にショッピングセンターができることになりました。その工場だった敷地の周囲には見事な木と古いブロック塀がありましたが、ここにバス停ができたことで大変混み合いまして、このブロック塀には落書きが絶えないという状況になりました。一方、ショッピングセンターの駐車場では車上荒らしや部品泥棒などの様々な犯罪が発生していました。

さぁどうしようかと考えたとき、ショッピングセンターは敷地が広いですから、敷地境界から少し後ろに下がってもらい、ブロック塀をなくして生垣にすると、落書きできなくなります。

次に、木の下にベンチを置くと、そこでは木陰で涼むことができますし、駐車場を見渡すことができるようになります。しかも、バス停の周りには空間ができます。

皆さんの地域にも、こうした小さな改善、もちろん一定のお金はかかりますが、機会を捉えて見守りやすい空間にしていく、と同時に快適な空間をつくることができる場所が多分、たくさんあるのではないかと思います。

 

 記憶に新しいと思いますが、昨年(2012年)4月、京都府亀岡市そして千葉県館山市で立て続けに集団登校中の子供たちに車が突っ込むという痛ましい事故がありました。その後、全国的に、警察や学校、地域が連携して、危険な場所を点検しました。

亀岡市は、犯罪からの子供の安全の取組に長年取り組んできました。しかし、あのような痛ましい事故が起きました。現場は学校近くの府道で、猛スピードで走ることができる場所でした。現在、その一部分を狭くしたり、交差点ではスピードを緩める装置を設けるという社会実験が行われています。

 子供たちを交通事故から安全に、安心して守るための方策ということで進められていますが、車がゆっくりと走る道になりますと、安心して歩くことができる高齢者や散歩をする人も増えます。こうした人々が道を歩くことで見守りの量を増やすことにつながってきます。

 

 皆さんも、防犯パトロールや子供の見守り活動を行っていると思いますが、それらはどうしても時間が限られます。特に下校の時間帯は午後3時から5時ですから、その場に駆けつけたいと思ってもなかなかできないという人もいるでしょう。

 北海道の旭川市の取組を紹介します。ここでは10年近く、特別な見守り活動をせずに安全で安心な地域づくりが進められています。雪国ですから冬は除雪をしなければなりません。短い夏には庭弄りをしています。どういう時間帯にそれらをしているか、「見守り量」で調べてみました。そうしましたら、子供たちが下校する時間帯にちょうど重ねてやっている人もいれば、それとは違う時間帯にやっている人もいました。人それぞれということもありますが、何時に子供たちが帰るのかという情報が提供されました。

 それから、高齢者は、いざというとき、子育て世代の人たちに支援をしてもらいたいと気持ちもあるので、社会福祉協議会はいかに子育て世代と高齢者をつなげていくかを考えました。その接点を作るため、普段やっている取組を下校の時間帯などに合わせてみようということになりました。これを近文という地区では「あい運動」と呼ばれています。

 

皆さんの地域でも、小学校区あるいは中学校区など学校を中心に、地域の人も一緒に、お祭りや災害などいろいろなことを話し合うことがあると思います。

子供たちを見守るのは、保護者や学校だけでなく、地域の中にもそうしたいと思う方がたくさんいるということは今申し上げたとおりです。練馬の事件でも交通のため児童を誘導する方が交差点に立っていたことが見守りの取組につながった訳です。

それぞれの地域ではどんな問題があるのか、子供たちの数もまちの様子も違います。そういう点から「安全マップ」づくりが行われていますが、それを基にして話し合う機会を持つ。これもいろいろな地域で実践されていると思います。

 その際に重要なことは、知っている人は知っているのですが、知らない人はほとんど知らない。それから先ほど申し上げたとおり、庭いじりや歌壇づくり、掃除など、地域ではいろいろな活動が行われていますが、そういうものも防犯や見守りにつながる活動であると捉えると、たくさん出てきます。「プラス防犯」と呼ばれていますが、それらをリストアップして、できることから始めるということが今、全国各地で進められています。

 

 千葉県鎌ヶ谷市の青年会議所では、地域で取れるかぼちゃをぜひ売り込みたいということで、ハロウィンと「子供110番の家」とを引っ掛けて取り組むということを随分長く続けています。

ハロウィンのイベントは、仮装してそれぞれの家に行き、その家の人と会うという取組です。「子供110番の家」については、どのような人がそこに住んでいるのか、知っている人は知っていますが、ほとんどの子供たちには分からないということが多いのではないでしょうか。

 以前、新潟県長岡市で、子供に「子供110番の家へ行く?」と聞いたことがあります。すると、「知らないおじさんやおばさんの所へは行ってはいけないと言われているから行かない。」と言われました。そのとおりなのですが、いざというとき駆け込める家であるということを、楽しいハロウィンイベントとつなげながら、農業の人たちともつなげていく。そういう取組もいろいろと考えられると思います。

 いろいろなことを申し上げましたが、できることから始めるということが肝要と思います。挨拶を交わす。これは基本的なことです。でも、恥ずかしいのでなかなかできないのが実態です。しかし、相手の顔を確認すると、潜在的な犯罪者は犯行を怯むし、挨拶によって知り合いが増え、絆も深まる。子供の健全育成にもつながってきます。

 

東京都子供見守りシンポジウム(2013年8月22日)の基調講演録より転載

シンポジウムについてくわしくはこちら

http://www.bouhan.metro.tokyo.jp/90_archive/topic/report_2013/09/p0905.html

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